2010年5月27日木曜日

ゲン@ 劇場:『川の底からこんにちは』

ゲンです。
今年は邦画もなかなか好調です!

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『川の底からこんにちは』
@渋谷ユーロスペース(5/7鑑賞)

仕事も人生も妥協して生きてきたヒロインが実家に戻り、病気で倒れた父親の営むしじみ加工工場の再建に奮闘する人生応援歌。
工場の従業員には相手にされず恋人に浮気されながらも、どん底から開き直って成長していくヒロインを『愛のむきだし』の満島ひかりが熱演する。

かつて『アフタースクール』の内田けんじ監督も獲得した「ぴあ」が主催する映画祭「PFFアワード」で、2007年にグランプリを獲得した石井裕也さんが監督・脚本したという作品ですが、多くの映画サイトで絶賛されてたので楽しみに観に行って来ました。

しょうがないから、頑張るしかない! ドン詰まりの女子が見せるリアルな奮闘記!

正直、ここまで素晴らしいとは予想してませんでした!
初めに言っちゃうけど、今年の邦画一位はほぼ確定だと思います!


ストーリーはというと・・・
上京して5年目のOL:佐和子は、5つ目の職場で、5人目の彼氏とその連れ子とともに仕事にも恋愛にも「妥協」の二文字を胸に悶々とした日常をやり過ごしていた。
そんなある日、実家でしじみの加工会社を営んでいる父が病に倒れたとの連絡が入る。

佐和子にはおいそれと帰郷できない事情があったが、彼氏の強引な後押しにしぶしぶ帰る決心をする。
が、実はこのどさくさにまぎれ、先に会社を辞めていた彼氏が娘とともに佐和子の帰郷について来てしまう。

受難の続く佐和子。
それでも父の後を継ぐかたちでしじみの加工会社で働き始めるのが・・・




脚本もですが、素晴らしいのはこのリアルな空気感。
自らを「中の下」と評価する主人公:佐和子は、仕事やプライベートの全てにおいて「私なんかは、これくらいでしょうがない」と妥協を続ける毎日。
何か悲しいことや落ち込むことがあっても、「しょうがない」でやり過ごす。
それは自虐でも逃避でもなく、自分なりにただ「生きやすい場所」なだけ。
そんな先にも後にも進めない佐和子が、しょうがなく出戻ってきた地元でも、ドン詰まりを味わい続ける。

一見すると救いが無さそうな状況だが、主人公の佐和子のキャラクタのおかげなのか、どこか微笑ましく笑って観ていられる。
でも観客も、薄々気づき始める。

「どこか自分と似てるかも・・・」

そう、例え仕事を転々としていなくても、恋人が甲斐性ナシでバツイチで子持ちでなくても、田舎に出戻ってバカにされていなくても、ドン詰まりを味わい続ける佐和子の心境に共感し始める。

そして、どんな苦境でもあっけらかんとし、打ち勝つでも負けるでもなく「しょうがない」で何となく乗り切り続けている佐和子を応援したくなってくる。

そんな佐和子も父が亡くなり、会社の経営も悪くなり、彼氏にも捨てられると、今までにない表情を見せる。

「もう・・・・頑張るしかない!」

そうだ、もう頑張るしかないんだ。
しょうがないのも、ダメなのも知ってる。
別に「努力しよう!」何ていう意味じゃない。
逆ギレかも知れないし、笑われるかもしれない。
でも、とにかく頑張るしかない。

観ているコチラが応援されてるワケでも、励まされてるワケでもない。
ただ、どこか許されてる気がする。
そして、手を引っ張られてるような気がする。

笑いとともに感じる、その不思議な安心感がとても心地よく、最後の最後までスクリーンに目が釘付けでした!


キャストですが、主人公:佐和子を演じる満島ひかりが本当に素晴らしい!
『愛のむきだし』(未見)で演技力の高さを各映画雑誌で絶賛されていたので、名前は聞いた事がありましたが、確かに演技力は高いのも頷けるし、それ以上に今の若手女優の中ではあまりいないタイプの空気とキャラクタを持っていて、とっても個性的で魅力的な女優であると思いました。
恐らく、今年の各映画雑誌の邦画部門の女優賞は、彼女が掻っ攫うんじゃねぇかなぁと思います。

そして彼女の叔父を演じる岩松了さん!
三木聡作品で独特な空気を放ってて、凄く好きな俳優さんですが、この作品でもその存在感は独特の味があって、とっても笑えました。


とにかく全体的に監督のセンスが素晴らしく光ってると思いました。
若干26歳(同い年!)の若手監督ですが、脚本・映像ともに変にしがらみがなく、こ慣れた様な甘いカットが全くと言っていいほど無いので、落ち着いた空気の作品なのに油断できずにスクリーンから目が離せませんでした。

このセンスがずっと消えずに、映画を撮り続けてくれたら、どんな傑作が生まれるのか、ちょっと末恐ろしいですね・・・


若手の監督が描く、ドン詰まりのリアルな空気感!

笑えて、泣けて、安心できる傑作ドラマ♪


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単館系なので爆発力って意味では弱めですが、あとからジワジワ感じるものがあったのと、自分と同い年の若手監督への賞賛と期待って意味を込めて、かなりの高評価にさせてもらいました。


東京では渋谷でしか上映してませんが、もう少し館数増やしてもらってもいいのになぁと思いました。
一般的には目立たないだろうけど、映画雑誌の今年のランキングでは確実に上位に食い込む作品だと思います。
と同時に、主演の満島ひかりの今後に期待♪
『愛のむきだし』も観たいのだけど、上映時間が6時間(1本で)と激しく長いので観る勇気がないのだよねぇ・・・w

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