2010年5月16日日曜日

梅太@ 劇場:『9 ~9番目の奇妙な人形~』

この記事は 是非とも短編が観たかった 梅太 の名の下にお送りいたします

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●ラストは希望か、それとも・・・:『9 ~9番目の奇妙な人形~
監督はシェーン・アッカー。
声の出演で、イライジャ・ウッド他。

 ラストシーンで、主人公達のその後を考え始めたら、思わず涙が出てきてしまった。


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 ストーリーは。

 背中に”9”の文字を付けられた人形は、ある朝目を覚ます。
 しかし彼が目を覚ましたときには、この世界は廃墟と化していた。

 街では、”ビースト”と呼ばれる機械獣たちが蔓延っていた。
 そしてビーストと日々戦いを続けている仲間の存在を知った。

 自分は誰なのか。
 何故世界は終わったのか。
 何故自分は生まれてきたのか。
 
 仲間達とともに、その疑問を解くための戦いが、今始まる―。

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 人形達は、全員、人格を持っている。
 リーダー気質の人、ちょっとお頭の足りない人、勇敢な人、臆病な人、好奇心旺盛な人。
 何故彼らが人格を持って生まれたのか。
 しかしそれよりも、僕が面白いと思った点は”誰の人格を入れられたのか”であった。

 集団、というものを考えると、上記したような性格の人達は、その中に一人くらいはいるはずだ。
 全員前向きなら良い!全員好奇心旺盛なら素晴らしい!・・・とは思うが、集団と言うものはそうではない。
 全体を見渡してみると、±0で、うまいこと調和が取れていて、だからこそ成り立っていると思う。

 さて、”集団”という大きな枠で捉えてみたが、これは”一人の人間”という小さな枠で捉えても、同じようなことが言えるのではないかと思う。
 例えば、研究者。
 自分の専門分野に関しては卓越した知識を持ち、実験や論文も完璧にこなすような人でも、仕事をする上で必ず必要となってくる事務処理というものに関してはからっきしであったり。
 例えば、探偵。
 自分の事務所のある建物の階段の数は完璧に覚えていたり、一度会った人のことは几帳面にメモ帳に記録しておくような人物でも、私生活はてんでダメという人がいたりする。

 全てがプラス面で成り立っているわけではない。
 そのプラスを相殺するようなマイナス面が、必ず存在する。
 ”集団”という塊同様、”一人の人間”という塊も、色々な要素が組み合わさって、総じて±0で出来上がっている。
 何が欠けても、それは塊足りえないわけだ。

 ”誰の人格を入れられたのか”
 これに関してはネタバレになるので、是非とも劇場でチェックして頂きたいが、僕はその謎を知ったとき、上記した様なことを思わず考えてしまった。

 また、”みんなで一つ”というキーワードは、戦闘シーンでも意味を発揮する。
 人形一人一人では大した力を持っていないけれど、それぞれ持っている個性を最大限に発揮し、融合させることで、敵に勝つ。
 主人公が小さな人形・・・ということで、なんだか『ナイトミュージアム』を思い出してしまった。
 これは僕の大好きなパターンだ。

 この戦いは何が欠けても、誰が欠けてもダメ。
 「こんな自分でも誰かに必要とされてる」という励ましを貰えたような気がして、ちょっと元気が出てくる。

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 「目覚めると、世界は終わっていた」

 この作品は、世界の終わりから幕を開けることになる。
 こういう作品の場合、結末はどうなるの?と終了直前までドキドキが続いて、何か良い。
 なんせもう”終わっている”のだから。
 そこから何が”始まる”のか。

 ビーストとの戦いで、人形達は傷つき、倒れていく者たちもいる。
 それでも何とか獲得した勝利。
 残った人形はごくわずか。
 だが戦いを始める前とは違い、自分達が存在した意味も知り、今後の彼らに希望を持たせるようなラストになっていた。

 が、僕は悲しい気持ちで一杯になってしまった。

 彼らはこの先、何を糧にして生きていくのだろう。
 彼らは人形だ。
 新しい仲間を生み出すことは出来ない。
 そして、死ぬことも無い。(動力源は不明なので、これは多分ということにしておく)
 何の変哲も無い時間が延々と続いていくのではないか。
 そう考えると、彼らがビースト達とは違い、”人格”を持って生まれてきてしまったことは、逆に不幸なことではないか。
 変化の無い無限の時間に、人格は耐えられるものではないから。

 仮に、新しい仲間(”人格”を持った)を生み出す技術を開発したとする。

 そこには色々な思想が生まれる。
 そこには集団が出来る。社会が出来る。国が出来る。
 思想の反発が生まれる。
 戦争が起こる。
 そして未来を、新たなる希望にかけ始める・・・・

 なんだかこの作品のラストからは、負の連鎖しか想像できない。
 が、こういう作品には出会ったことが無いため、良い映画体験が出来たとも思う。

 ・・・とは言いつつも、やはり悲しい。

 やはり、9が目覚めたときには、世界は”終わっていた”のだな。


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 さて、オリジナルの短編の方は、どういう作品だったのだろうか。
 バートンを惚れ込ませたその短編を、是非とも観てみたいと思う。
 DVDや何かには収録されるのかな?

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