2010年5月9日日曜日

梅太@ 劇場:『17歳の肖像』

この記事は 女性の変わりようというのはすごいものだ・・・と思う 梅太 の名の下にお送りいたします

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●経験こそが、最高の教育:『17歳の肖像
監督はロネ・シェルフィグ。
主演は、ビックリするほど素敵になったキャリー・マリガン。

 予告編を観たとき、思わず心ときめいた。

 誰、これ?キャリー・マリガン?誰?
 調べてみたら、『プライドと偏見』の5人姉妹の、一番出番の少ない子だった。
 そんな彼女が、こんなにも・・・こういう驚きも、映画の醍醐味の一つ。


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 ストーリーは。
 ロンドン郊外、トゥイッケナム。
 この街の高校に通うジェニーは、成績優秀、親からはオックスフォード行きを期待され、学校でも一目置かれる存在だ。

 しかし彼女の興味は別にある。
 フランスへ行き、様々な芸術に触れ、知識人と交流することを夢見ていた。

 惰性のように感じる毎日を過ごすジェニーであったが、ある日、ディビットという男性に出会う。
 紳士的な態度、教養に富んだ会話。
 彼はこれまであった全ての人と違っていた。

 彼と過ごす日々が、16歳のジェニーを大きく変えていくこととなる。

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 本作の主人公ジェニーが放つ、
 
 「教育するならその意義も教えてください。私のような生徒はまた現れる。」

 という一言は、かなりインパクトがあったし、最もであると思った。

 生きていく上で学校だけが唯一の道ではない。
 また学校教育を受ける意義も、人それぞれで違うはずだ。

 大人になると、そんなことは当然だろ、と思ってしまう。
 当たり前すぎて話題にすらしないかもしれない。
 だが大人たちのそんな態度は、いずれ子供たちにこういう疑問を生ませてしまうのだと思う。

 しかし何かしらヒントを与えてあげないと、 気付くのはなかなか難しい。
 
 だから教える側が、”教育の意義”を、自分なりの考え方でも良いからしっかり持ち、伝えていく事。
 これはとても大切なことであると思う。
 「こうしなさい」ではなく「こうなんじゃないか」という言い方でも良い。
 子供達が”自分なりの意義”を見つけるまでの指針になると思う。
 歩く道を見失った不安と言うのは、かなり大きいもの。
 とりあえずの指針でもいいから、示してあげるのが、子供以上の”経験”を積んでいる(はずの)大人の役目ではないかなと思う。

 

 ジェニーは、”自分なり”の教育の意義を見出せたが、それは上記したような優れた教育者がいたわけではない。
 彼女の場合は、周りの荒波に揉まれ・・・つまりディヴィットと出会い、様々な”経験”をし、様々な価値観に触れることがなければ、見出せなかったものだ。
 予告編で登場する「あの頃に戻っても、私は私を止めたりしない」という言葉は、それを良く表していると思う。

 「”経験”こそ、最大の教育である。」
 と、僕は思うし、この作品を観て一層そう思った。

 が、やはり道は一つではない。考え方も一つではない。
 何が絶対的に正しくて、絶対的に間違っているか・・・という問題でもない。
 なかなか難しい。

 とにかく、自分で見つけた答えはかけがえの無いものであることは事実。
 それが例えば間違っていたとしたら、それを間違いと潔く認識し、修正できる柔軟さを持っていけたらと思う。
 

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 作り方という面では、本作は人物設定が実に美事であると思う。

 ジェニー(”素敵”方面に急成長を遂げたキャリー・マリガン)は、almostオールAの成績の持ち主で、でもラテン語がちょっと苦手(そこがまたカワイイ)という優等生。
 父は、オックスフォード行きを強く望み、それ以外のことを考えない。
 母は、いまいちはっきりしない。
 先生方は、教える立場にありながら教育に対してしっかりとした答えを持っていない。
 教養はまったく無いが、それでも生きる術を持っているヘレン。
 そしてディビットの本性。

 これら全ての人物配置が、ジェニーに「教育するならその意義も教えてください。」という言葉を吐き出させるまで、そして自分なりの教育の意義を見つけるまでの物語の運びに、説得力を持たせているように感じた。

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 非の打ち所が無く、素晴らしい作品でした。


 が、やはり本作の一番の収穫は、キャリー・マリガンでしょう。
 彼女の魅力には、抗えないものがありました。
 笑うとキュートだし、遠くを見据える視線は思わず吸い込まれる。
 エマ・トンプソンと対峙しての迫真の演技には惹き込まれました。

 『SCREEN』誌の09年No.1作品『パブリック・エネミーズ』にも実は出演していたみたいですが、まったく気付かなかった。
 彼女は世間の敵とはまったくの正反対の位置にいますしね。
 この作品をキッカケに、世界中が彼女に味方していくことでしょう。

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