2008年10月5日日曜日

梅太@ DVD:『ダージリン急行』『ペネロピ』『つぐない』

この記事は 梅太 の名の下にお送りいたします

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今日は、先月購入した3本の新作DVDの感想をまとめて書きます。

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●『ダージリン急行
 ウェス・アンダーソン監督最新作。インドを舞台にした3兄弟のスピリチュアル・ジャーニー。
 主演は、アンダーソン作品ではおなじみオーウェン・ウィルソンジェイソン・シュワルツマン、そして新顔エイドリアン・ブロディ

 ウェス・アンダーソン監督作品はものすごく好きで、DVDももちろん全部持って・・・ますと言いたい所ですが『天才マックスの世界』は絶版ですので購入できていないです。
 再版しないかなぁ・・・

 アンダーソン作品の特徴の一つは、完全オリジナル脚本というところが一つ挙げられるでしょう。
 そしてそれらすべてが、家族・友情の崩壊と、ちょっとの前進(仲直り)を描いています。
 完全オリジナルと言いつつも、もちろんベースとなっているものはあり、『ロイヤルテネンバウムス』であれば、J・D・サリンジャーの『グラースサーガ』に強い影響を受けていますね。

 最新作である『ダージリン急行』は、父の死によりバラバラになっていた兄弟が、長男の企画したインド旅行により久々に顔を合わせるところから始まります。
 3兄弟の中で一番早く登場するのは、次男のエイドリアン・ブロディ。
 無意味なスローモーションで列車に乗り込むという場面は、とてもアンダーソン作品らしくて、ファンなら思わずニヤリとしてしまうでしょう。
 ここでかかる曲『This time tomorrow』という曲も、非常に合っています。

 
 この『ダージリン急行』は、今までの作品からすると物語性と言うのは一番薄いかもしれません。
 ストーリーを楽しむ、というよりは、3兄弟と共にインドを楽しむ作品です。でもその旅行が、アンダーソン作品独特のユルさといいますか、それと非常にマッチしているのですよね。
 なので、今まではカルト的な人気の方が強かったように思いますが、癒しを求める現代からすると、一番受け入れられやすい作品ではないでしょうか。
 究極のリラクゼーションムービー。疲れたなぁ~、という時に観たい一本。

 ウェス・アンダーソン作品は、今後、ロアルド・ダールの小説の映画化など、2本が決まっているそうです。
 オリジナル脚本でない作品は初ということになりますが、どう料理してくれるのか楽しみですね。



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●『ペネロピ
 リース・ウィザースプーンが立ち上げた製作会社から発のファンタジー。
 呪いによって豚の鼻をもって生まれた少女が、呪いを解くまでのお話。
 主演は、豚の鼻をつけてもそのキュートさは変わらないクリスティーナ・リッチ、そして今年一番輝いている男優ジェームス・マカヴォイ

 テーマとしては「外見より中身」「自分を好きになろう」「自分の殻から抜け出そう」という、自立した女性が多い現代には励みになるメッセージを含んでいると思います。
 僕も最初に観たときは、そう感じました。

 でもある台詞を元に紐解いてみると、2回目はまったく違った印象を受けました。
 それはマカヴォイ扮するマックスが発する「you know, you inspired me(君に刺激されたよ)」という言葉。
 この言葉を軸に考えると、自分を変えるのは自分自身・・・というのはもちろんのことですが、”誰かに影響されて変わっていく”お話でもあるのだという事に気付きました。

 豚の鼻を持って生まれたことで、20歳を過ぎても家から一歩も出られないペネロピ(クリスティーナ・リッチ)は、お見合いにきたマックスの自由奔放さに影響をうけ、外の世界に出ようと決意します。
 マックスは、呪いを掛けられ、身体的なコンプレックスを抱えているのにも関わらず、自分と言うものを強く持っているペネロピに影響され、今自分は何がしたいのかを考え始めます。
 この二人の小さな変化は、身近な人、ペネロピが小さな頃から真相を追っていた新聞記者を始め、街全体を巻き込んで、良い方向に進んでいくのです。

 ペネロピのお母さん(キャサリン・オハラ)だけは、唯一変わらないというところがまた面白いのですが (笑

 製作者側、配給側が提供する主題に沿ってみるのも良いと思いますが、一つの台詞、一つのシーン、役者の一動作に注目して紐解いていくと、まったく違った作品に感じる。

 映画と言うのはやはり面白いなぁと感じさせてくれる一本。


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●『つぐない
 ジョー・ライト監督の最新作・・・は、来月米で公開となる『The soloist』ですが、日本内で言えば最新作。
 主演は、ライト監督の処女作であり、僕の中での恋愛映画No.1である『プライドと偏見』でも主演を務めたキーラ・ナイトレイと、今年一番フレッシュで輝いていて、今後が楽しみな男優ジェームス・マカヴォイ

 第一印象はもちろん素晴らしかったのですが、鑑賞後に気付いた点が多く、早くDVD出ないかなと待ちわびた作品。
 そして二回目の鑑賞。オープニングの演出で、もう泣きそうなくらい興奮してしまった
 ライト監督の、特に演出にかける拘りの強さには脱帽です。
 
 この作品は、タイプライター音を始め、その場面に配置してある音の出るもの(ピアノ、ライター、照明等)が、主演とでも言うくらいに多用されます
 その音の使い方が、例えば曲の切れ目だったり、曲の中に入ってくるドラム音にいつの間にか変わったり、もしくはタイプライター音自体が曲を奏でていたり等、とても効果的に使われていて、派手なシーンではないのにも関わらず、思わず拍手してしまいたい出来になっています。
 いえ、僕は拍手しちゃったのですけど。
 
 詩でいうところの、韻を踏んでいるような感じ。観ていて非常に気持ちがいい。
 すべてのシーンに耳を凝らして、この作品は観てほしいですね。
 

 見事な演出はまだまだあります。3つご紹介。番号をクリックすると、you tubeに繋がります。


 描いている時代が時代だけに、作品の流れがゆっくりとしてしまうと思いきや、序盤の、役者の速くきびきびした動き、早いペースの会話、また歯切れの良いブリティッシュイングリッシュが、この作品のテンポを決めています。


 先日の記事にも書きましたが、ライト監督の演技演出は、爆発しそうな内なる感情を抑えに抑えて演じさせるのですよね。
 もちろん、役者の力量にかかっているわけですが、今回はジェームス・マカヴォイがやってくれます。


 そして忘れてはいけない、「長回し」。
 映画と言うのは、1カットを幾つも繋げることで1シーンが出来上がり、その1シーンを幾つも繋げることで約2時間の映像が出来上がります。
 この1カットは実は一つ一つは案外短かったりします。1台詞だけで終わってしまったりもするのです。

 そのカットが異様に長いのが、いわゆる「長回し」という手法。

 これは役者陣はじめ、カメラなどのスタッフ陣も、綿密に動きを決めなければなりません。
 そんな苦労をして出来上がる映像は、独特の緊張感を帯びています。

 今回は5分間の長回しに挑戦しました。・・・きっと、史上に残るような出来ではないでしょうか。
 このシーンも、観終わったあとに思わず拍手してしまいたい出来です。
 いえ、僕は拍手しちゃったのですけど。


 と、演出のことしか書いていませんが。。
 ストーリーは鑑賞したときに追ってもらうとして(これも見事な脚本と言わざるを得ないですが)、二回目に観るときには、映像・音響の隅々にまで集中してみると、ライト監督のすごさがわかるかと思います。

 次回作『The soloist』も期待大です。



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以上、3作品の感想を一気に書きました。
気になる作品があったら、是非TSUTAYAへ足を運んでください。
どれも、観て損は無い作品です

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