この記事は あぁ、ギリアムだったなぁ・・・・な 梅太 の名の下にお送りいたします
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●Let's Dance with Devil :『Dr.パルナサスの鏡』
監督はテリー・ギリアム。
主人公トニー役に、ダブルキャストならぬクオドラプルキャストで、ヒース・レジャー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル。他、クリストファー・プラマーや、お人形のようなリリー・コール等。
未だギリアムにハマったことのない僕が、また懲りずにギリアム映画を観にいきました。
今回は意外や意外、終盤「おっ!?」と思わせてくれる(つまり、若干ハマってしまった)作品で、良い気分で劇場を去りました。
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ストーリーとしては。
今時馬車を引きながら、移動巡業するDr.パルナサスの一家。
彼らのショーの内容は、セット上に用意した鏡に人を入れること。
その鏡の中では、入った人の願望が形となって目の前に広がるという、魅力的なもの。
しかし舞台外装がチープなので、今や誰の関心も引かない。
ある晩、移動中に、一家はある男の命を救う。
彼は自分の名前も、職業も、何も覚えていないという。
そんな彼に不信を抱きつつも、彼の持っている”何か”に引き寄せられ、巡業の手伝いをさせる。
しかし彼は知らない。
この一家が、何故このような巡業を続けるのか。
それは、パルナサスの過去に起こった、悲しい出来事に由来していて・・・
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鏡の中には、自分の願望が形となって広がっている。
それを幻想的なCGで観せるのが、本作の一番のウリであるように思う。
(いや、一番のウリは”作品そのもの”より、ヒース・レジャーの遺作というところかな? )
しかし、そこは如何せんギリアムのCG映像だから、ハマらない人はハマらない。
作中、ジョニー・デップやジュード・ロウのパートを観ているときは「あぁ・・・またかギリアム」と思った。
ギリアムの映像(というか頭の中?)は、『グリム童話』の世界観に、『不思議の国のアリス』の荒唐無稽な部分だけ抽出して、それらを混ぜ合わせた感じだ。
つまり、起こっていること全てに突っ込んでいたら、キリがないということ。
仏像の頭が回転しながら飛び去るし、女は浮いている。ミニスカートをはいたおっさんが踊るし、天に届く棒で竹馬もやる。手は話すし、宇宙に海月が浮いている。
(ギリアムっぽいといえば、そうであるけど)
ギリアムにCGというオモチャを与えると、荒唐無稽さだけが目立つ。
つまり何でも再現できる故、メチャクチャになる。
『ローズ・イン・タイドランド』の時は、このメチャクチャさが、僕をゲンナリさせた。
しかし今回、オープニングの”馬車の荷台が舞台になる”という映像は僕を興奮させたし、舞台上で繰り広げられる、あくまでも”チープなショー”は、僕のツボにはまった。
ガンガンにCGを使わなくても、ギリアムはいいものを持っているのに・・・と思った。
鏡の中の世界も、この良い意味でのチープさをもってすれば、すごく良い絵になったと思うのだけれど。
それが中盤、ジョニー・デップとジュード・ロウの・・・というのは、さっき話しましたね。
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しかし今回秀逸だったのは、「悪魔との対決」という要素を入れ込んできているところだ。
『ローズ・イン・タイドランド』の時とは違い、ストーリーがグっと面白くなっていた。
何より、僕がそういった「悪魔との対決」という題材が好きだからというのもある。
悪魔は怖い。
何が怖いというと、彼らは人を誘惑してくる。
僕らに安易で楽な選択をさせ、破滅に導く。
それを嬉々としてやってくる。
怖い怖い。
でも彼らの誘いは、とっても魅惑的なのだ。
Dr.パルナサスも、過去に悪魔に魅惑された人物だ。
惚れた女性に近づきたい。でも自分は年をとり過ぎている。
そこへ悪魔がやってくる。
「お前に若さと、永遠の命を与えてやるよ。見返り?いやいやそんなもの・・・俺達は友達じゃないか。」
幸せを手に入れたパルナサス。数年後にまた、悪魔が彼の元へやってくる。
「いやぁ、幸せそうだね。そうそう、見返りの話だけれど、いずれ生まれてくる君の娘を俺にくれよ。嫌だって?じゃあ賭けをしよう。いやいやとっても簡単な勝負だから、君が勝つとは思うけどね」
そんなことはない。すべて計算されているんだ。
でも目の前の誘惑に、人間は勝てない。
本作の物語の核を成すのが、娘:ヴァレンティナを賭けた、パルナサスと悪魔の対決だ。
パルナサス優位かと思いきや、やはり悪魔の手のひらで踊らされてて、パルナサスは大切なものを、少しずつ、しかし確実に奪われていく。
この絶望へ一直線な感じが、僕をゾクゾクさせた。
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僕がたまらなく好きだったシーンを紹介しようと思う。
パルナサスが奪われたものの一つに、”娘の信頼”がある。
実は自分は賭けの商品だと知らされたヴァレンティナは自暴自棄になる。
そこへ悪魔がやってくる。
「さぁ、踊ろう」
このシーンは、溜息が出るくらい素晴らしかった。
赤いドレスのヴァレンティナ、黒いタキシードの悪魔、砕け散った鏡・・・と、映像的にも素晴らしかったし、掛かる曲も素晴らしかった。
しかし何より、その行為自体に興奮させられた。
”悪魔と踊っている”のだ。
こんなに幻想的で魅惑的なダンス、この世に他にあるだろうか。
(あ、”この世”ではないか)
悔しいけれど、このシーンばかりは、ギリアムにやられた。
やるなギリアム・・・僕の負けだ。
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欲を言えば、僕はこの作品は、絶望一直線のまま終わってくれた方が良かった。
中にはそんなファンタジーがあったって、良いではないか。
でもラスト、待ち行く女性にリンゴを与える悪魔に、ニヤリとさせられた。
そう、僕達人間は、始祖の代から、悪魔には勝てなかったのだ・・・・
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全然期待してなかったから、思わぬ収穫でありました。
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