2010年2月11日木曜日

梅太@ Blu-ray:『Pride and Prejudice』(US輸入盤、邦題:『プライドと偏見』)

この記事は Blu-rayの醍醐味を味わった気がする 梅太 の名の下にお送りいたします

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 日本では'06年に公開された、ジョー・ライト監督の長編処女作:『プライドと偏見』。
 この作品は、ロマンス部門では僕の中の一位です。
 (『(500日)のサマー』に抜かされそうな・・・イーブンかな)

 Blu-rayというと、近年のアクションやSF等、CGをバリバリに使った作品を味わうのに適してると思われます。
 しかしジョー・ライトのように、画や音を美しく撮る(録る)監督の作品は、綺麗さがより際立ち、お家鑑賞での感動を増してくれます。
 もっとも、劇場鑑賞にはやはり勝てませんけれど。

 しかし日本ではBlu-ray盤が販売される気配が無いので、ちょっと輸入盤を買ってみました。

 以下、内容にも触れていきますが、映像や音のグレードアップについての文が多くなるかもしれません。

---------------------------

 とりあえず、『UNIVERSAL』のロゴが綺麗過ぎました。
 いや、それはいいか。

 この作品は日の出のシーンから始まります。
 静かな田園に、日の光が差し込んでくる。
 バックに流れるピアノの旋律と、鳥の囀りが重なり、溜息が出るほど美しいシーンです。
 劇場で観たときも綺麗だと思いましたし、DVDでも十分綺麗でしたが、Blu-rayはザラザラ感が無くなり、鮮明になっていたように思います。特に音が。


 夜のシーン。
 お家での鑑賞だと、TVの発色によるところもありますが、どうしても暗くなりがちです。
 19世紀を舞台にした作品というのもあります。電灯のような照明がありませんので。
 しかしAQUOSとPS3をHDMIという運命の糸(ケーブル)で繋ぐと、わずかな明かりで浮かび上がるキーラ・ナイトレイの顔立ちの、なんとも美しいことか。

 昼のシーン。
 太陽の明かりを、これほど活かしきった作品も近年無いだろうと思います。
 暖かみを存分に感じられます。
 衣装の白や薄い青などがよく映えます。

 さて、輸入盤Blu-rayを買ってまで是非とも観たかったシーン。
 恐らく観た人みんなの脳裏に焼きつくシーンだと思われます。

↓↓↓コチラ↓↓↓

 


 作品中盤、エリザベスが叔父家族と一緒にダービシャーへ旅行する。
 その道中の高原で、エリザベスが切り立った崖に佇むシーンです。

 このシーンの綺麗さ。『タッチ』の主題歌ではありませんが、思わず息をするのを忘れました。
 すぐにDVD版に入れ替えて比較してみましたが、全然違います。
 大げさに言うと、草の一本一本まで鮮明に写されていますし、岩の傷一つ一つがくっきりしています。
 控えめに言うと、ザラつきが無くなり、発色も綺麗になり、草の一本一本・・・いや、同じこと言うのはやめましょう。
 また影がはっきりしたおかげで奥行きが感じられ、ものすごく迫力のある映像となっていました。
 劇場で大スクリーンに映し出されたときの感動には敵いませんが、これはこれでまた違った迫力があります。

 ちなみに舞台は、ピーク・ディストリクトという広大な高原地帯だそうです。
 実写です実写。
 ごめんなさい、正直言って、『アバター』はこれの足元に及ばないと思います。僕は。
 2Dで、実写でこんな画が取れるなら3Dはいらないのでは?
 そう感じさせるほど迫力のあるシーンです。

 またジョー・ライトのニクい演出が、このシーンに移行する直前は、ナイトレイの超クロースアップという、とても窮屈な画が写されるのですよね。
 窮屈から一気に開放されることで、この高原の広大さがより引き立っています。

 このシーンをこういった形で観れたというだけでも、わざわざ輸入盤を買った価値はあると感じさせてくれました。
 読み込みが若干遅いのが玉に傷ですけれど。

▼▼▼▼▼▼

 さて、上記シーンを主軸にして、作品解説を少々させて頂きたいと思います。



 この作品は、19世紀の女流作家:ジェーン・オースティンの長編小説を映画化したもの。
 一目見たときからなんとなく気にはなっていたものの、上流階級の男の持つ自負、片田舎に住む女の誤解・偏見が、二人の恋の障害となっていくという作品です。

 作品中盤に向かうにつれて、エリザベス(キーラ・ナイトレイ)とダーシー(マシュー・マクファディン)の関係は拗れていきます。
 それはエリザベスの家族に対するダーシーの行いが誤解されたり、周りの人から聞いた悪い噂によるものです。
 しかしダーシーが渡した一通の手紙には、それらが全て間違っていたことが告白されてしまいます。
 だがいきなり全ての真実を知らされたエリザベスは、何を信じていいのか困惑してしまう。
 
 上記シーンへは、そんなエリザベスを外に連れ出そうと叔父家族が旅行を提案したところから繋がっていきます。

 作品を観ていると、このシーンを境にして、エリザベスの心境が変化します。
 旅行中、ダーシーの屋敷へ訪問をすることになるのですが、そこでのダーシーとの会話は、ぎこちなくはありますがこれまでの毒は抜けているように思います。

 このシーンを読み取る鍵として、俵万智の短歌を挙げさせていただきます。
 「今日までに私がついた嘘なんてどうでもいいよというような海」

 自然の持つ広大さ、力強さを目の前にすると、僕達はなんてちっぽけなんだ・・・と思うことがあります。
 世界はこんなに広いのに、こんな小さなことで悩むなんて・・・

 広大な景色を目にすることで、エリザベスは「人に対する偏見なんて、何てバカらしいんだ」と、そう感じたのではないでしょうか。
 このシーンの直前の超クロースアップ(凝り固まった偏見の念)から高原へ一気に開放される(偏見なんてバカらしい)という流れは、そういった意味合いがあるのではないかと感じます。

 『高慢と偏見』とは巧く言ったもので、人と関わっていく上でこの二つは必ず付いて回ります。
 気をつけよう気をつけようと思っても、無意識のうちにそういった考えは生まれてしまうものです。
 そんなときは、エリザベスがそうしたように、外に目を向けてみましょう。
 何も、わざわざイギリスへ行けというわけではありません。
 いつでも僕達の頭上に広がっている空を眺めてみてもいい。
 ちょっと海へ行ってみてもいい、山へ行ってみてもいい。
 島国に生まれた日本人は幸せで、ちょっと移動すればそれがある。
 内に生まれてしまった思いに悩まされたら、外へ外へ。

 そうするとある日突然、苦手だった相手の、良い所が見えてくるかもしれません。

---------------------------
 さて、僕のロマンス部門No.1の作品にもかかわらず、ロマンスなお話は一つも出てこなかった今回の記事。
 それはまたの機会にいたしましょう。

 Blu-ray買ってよかったです。

0 件のコメント: