2010年2月28日日曜日

梅太@ 劇場:『恋するベーカリー』

この記事は パン食べたい・・・・と思う 梅太 の名の下にお送りいたします

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●恋はいつだってcomplicated:『恋するベーカリー
監督はナンシー・マイヤーズ。
出演は、底の知れない女優No.1のメリル・ストリープと、最近離婚した役多くないか?と思うアレック・ボールドウィン。

 原題は『It's Complicated』。
 ”複雑”という意味です。
 これを念頭において2時間を過ごすと、より一層、作品を楽しめると思います。

 僕はといえば、10分に一回「ハハ、複雑~♪」と笑っておりました。

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 ストーリーは。

 10年前。
 ジェーン(メリル・ストリープ)とジェイク(アレック・ボールドウィン)は離婚した。
 10年という歳月を経て、ジェーンの心は落ち着き、新居やベーカリー経営など、充実した日々を送っていた。
 ジェイクはといえば、若い女性と再婚をし、新たな生活をスタートさせていた。

 NYでの息子の大学卒業式。
 ジェーンとジェイクは偶然にも、同じホテルに宿泊した。
 そしてバーで語らい、一夜を共にする。

 以来、ジェイクの心には火がついてしまった。
 ジェーンも同じだが、この関係には疑問を感じている。

 自分の心の赴くままに生きればいいのか?
 それとも道徳を重んじるべきか。
 悩むジェーンの前に、新たな男:アダムも現れて・・・

 さて、ジェーンのとる選択は。

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 人生における、そして恋におけるComplicatedな場面を余すことなく集約した作品。

 オープニング。
 友人夫婦の結婚30周年記念パーティーに揃って出席していたジェーンとジェイク。
 この映画について何も知らされていない観客にとっては、仲睦まじい夫婦に見えたに違いない。
 そこに、二人に接近してくる若い女性をスローモーションで映す。
 その後に、意味ありげに、メリル・ストリープのアップを映す。
 この2ショットで、全てを把握させてしまう構成の美事さ。
 さすが、ナンシー・マイヤーズ。

 それ以外にも、この作品は言葉を用いない一瞬のシーン、一瞬の表情で、場の雰囲気を伝えるという手法が多いように思いました。
 離婚した夫婦、分かれた家族というもののもつ複雑(Complicated!)さを出すには、やはり言葉で言うより、”雰囲気”であらわした方が、見ている側が汲み取ってくれるのではないか。

 きっと、そういう思惑があったのではないかなと思います。

 そしてそれが、見ている側にしっかりと伝わったのは、監督の力もありますが、役者陣や、ナンシー作品ではおなじみとなったハンス・ジマーの綺麗な音楽にもよるところもあります。
 
 役者陣では、メリル・ストリープは言うまでもないですが、今回注目したいのが、彼女の子供役の3人。
 あまりにも素晴らしかったのでここでしっかり名前を挙げておきますが、長女ローレンにケイトリン・フィッツジェラルド 、次女ギャビーにゾーイ・カザン、長男ルーク(フォースは使いません)にハンター・パリッシュ。
 出演シーンが多くないにもかかわらず、とても印象に残りました。

 なぜなら。

 一度は離婚した夫と関係をもつ。
 聞いただけでは、人によっては理解に苦しむ設定ではありますが、その過程を誰もが共感をもてる要素を入れ込み、軽快にサラリと描いているので、物語が進むにつれて段々と引き込まれてしまいます。
 次の展開はどうなるのだろう・・・
 熟年の恋愛を描いているのに、何だか10代の恋愛を見ているように、ハラハラドキドキしてしまいます。

 それも絶頂を迎えようとする最中、この二人の関係は、3人の子供たちにバレてしまいます。

 眼に涙を溜め、長女はこう言います。
 「あなたたちはいつも身勝手なのよ。」

 この言葉は、二人の心に刺さったに違いありませんが、見ている側もドキっとさせられる一言。

 「恋は理屈ではない。」
 「愛してしまったのだからしょうがない。」
 「彼女の青い瞳、笑い声、細い膝、ハート型のアザ、話し始める前に唇を舐める仕草、全部好きだ。」

 これらは、恋愛映画では、度々聞かされる言葉です。
 しかしそれは、”誰と誰の”恋愛なのかによっては、そうはいかなくなります。

 特に今回描かれる恋愛は、熟年の恋愛。
 しかも、元夫婦。
 彼らには、いくら全員が成人になったとはいえ、”子供”という責任があるのです。
 もう手放しで色々なことをしていられる立場ではない。
 この作品に出てくる子供たちは、浮かれていた二人を、そして観客を、現実にスっと引き戻してくれます。(しかもシコリを残さずに!)

 そして子供たちのおかげで現実に戻ったからこそ取り得る二人の選択というのが、この作品をより一層、面白くしてくれるわけです。

 この他、「久々に家族で揃った食事会」のシーンなど、子供役の面々が、この作品において本当に良い立ち位置にいて、本当に良い雰囲気を作ってくれています。
 大物俳優達を目の前にしても霞むことのないの無い存在感、素晴らしかったです。


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 10代を描いた恋愛映画は、数多くあります。
 それは、誰もが通ってきた道だから、共感を得やすいという面もあるでしょう。

 その点、ナンシーが描く恋愛というのは、24歳厄年の僕は勿論経験したことが無く、年を重ねた人でも経験したことがある人なんて極僅かというようなものです。
 しかしそんな人たちにも、しっかりと物語に引き込んでしまう手腕に、改めて拍手を送りたい。

 そして、ジェーンとアダムの背中を映すラスト。
 二人はこの先、友達のままなのか、恋人になりえるのか。
 そういうことを想像する楽しさを残してくれたのも、とても良かった。

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 恋がしたくなる!というよりは、クロワッサンが無性に食べたくなる映画です。
 朝一で見て、お昼はパン屋へ行く、というのが良い選択だと思います。

 僕はといえば、レイトショーで観たので・・・そういうことです。

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