2008年9月17日水曜日

ゲン@ 劇場:『パコと魔法の絵本』

ゲンです。
あんまり更新できなくてスイマセンでした。

■映画『パコと魔法の絵本』@有楽座(9/16鑑賞)

「大王」こと、後藤ひろひとさん原作の舞台『ガマ王子VSザリガニ魔人』を、『嫌われ松子の一生』『下妻物語』の中島哲也監督が映画化。

原作の舞台は、僕が今まで観た演劇作品の中で一番好きな作品で、演劇にハマるきっかけになった、とてつもなく思い入れのある作品なだけに、初めに映画化の話を聞いた時は、あの世界観が崩れてしまうのを懸念して本当に残念でした。
ただ、中島監督が撮ると聞いて、まだ映像作品としては観れるかなぁとは少しは希望を持つことが出来たのですが、キャストが豪華なだけに実際に観るまでは不安でした。

当方、映画の鑑賞数はそれなりですが、ほとんどが原作をよく知らずに観ていました。
そんな中で、原作をここまでよく知っていて、加えて思い入れもハンパなく強い作品なのは、今までで初めてです。
原作舞台のDVDは擦り切れるほど観て、セリフもほとんど覚えちゃってますからw

ですから、メインに関係無いどんな小さいエピソードが削られようが、「あぁ・・・そこ端折るんだ・・・」ってなるのは覚悟していました。

結果・・・

まぁ、十分に泣けたし、笑えたけども、
原作を知らなければもっと楽しめただろうなぁ・・・


これだけ大胆に映像を作られても決して折れない、大王さんの書いた原作の強さに驚かされました。
『嫌われ松子~』の中島監督だけあって、ド派手でドギツい超独特の世界観を持った映像ですが、そこにストーリーが負けておりません。
原作と同じ部分で笑えて、原作と同じ部分で泣けました。

ただ覚悟していた通り、脚色という部分では違和感を感じました。
でも、それは仕方が無いこと。
舞台と映画は全くの別物ですから。
特に大王さんは映画が大好きなだけに、舞台として自分で作品を作った時は、映像では決して伝わらないモノをこれでもかと込めてきますから、それが映画にしたときに無くなってしまうのは当然。

では、代わりに何があるのか。
それは映画として、映像として楽しめる面白さです。
原作と同じように、出演者たちは「劇中劇」としてあるお芝居をするのですが、その表現がまさに映画的。
CGや合成をふんだんに使い、大人も子どもも楽しめる“ファンタジー”として見事に表現されています。
このシーンが特に顕著に現れていましたが、全編通してそれを感じることが出来たのは素晴らしかったです。


そして、キャスト。
この原作は初演、再演と行われ、それぞれほとんどのキャストを入れ替えて上演されてきましたが、演者のイメージや演技力で言えば、それぞれに良し悪しがありました。
しかし、今回の配役は今までで一番と言ってもいいくらいに、ピッタリだったと思いました。

特にそれを感じたのは、主演のパコを演じたアヤカ・ウィルソン。
若干、11歳の子役ですが、ココが極めて重要。
作品上、この子の設定はまだ幼い女の子ですが、原作では舞台として上演するにあたり、上演時間や上演期間の問題であまり小さい子を使うのは非常に困難なことです。
過去に上演された舞台でも、この子の役は所謂“子役”というよりも、“若い女優”といった感じの人が演じてきたんですが、ストーリーから想像する人物像では、もっともっと小さい子が演じた方が良いとは、つくづく思っていました。
それが今回、映画として撮影するにあたり、この問題が解決されたワケですが、今までにパコを演じた中でも、最もイメージに合っていたのではないかと思いました。

他のキャストも、ただ豪華なだけではなく、映画としてこの作品の世界観を広げるには充分過ぎるほどにキャラの濃い人たちで、より一層“ファンタジー”として面白さを強めていたと思います。

個人的なことを言わせてもらえれば、初演・再演と舞台でも同じ役を演じた龍門寺役の山内圭哉さんのセリフは、原作とほぼ同じなんですが、映画になってもやっぱり変わらない面白さで、声を出して笑ってしまいましたw



何度も書いてますが、「映画として」面白い作品でした。
原作舞台には、とてもじゃないけど敵いません。

ただ、あくまで「良い意味で別物」「もうひとつの『ガマザリ』」として観れば、十分に面白い作品なんじゃないかと思いました。

それもこれも、「普通の映画」として撮らなかった中島監督の力量が大きかったと思うので、他の監督が撮っていたら、ここまで良い評価を僕は出来なかったと思います。

恐らく今後、大王さんには映画原作の以来が多くなると思いますが、ファンとしてのワガママな願いを言わせて頂けるなら、余計なほどに慎重に進めていただきたいですね。

まぁ、以前に久ヶ沢徹さんも出演した『止まれない12人』という、これも超々名作の舞台作品の映画化を以来された時に、「これは舞台として上演する為に書いたんだ!」とあっさり一蹴したことのある大王さんですから、余計な心配なのは分かってますがw


大王さんの脚本力は偉大だと、再確認するには十分な作品でした。

だから、原作を知らない人は絶対に損してますよ!

と、声を大にして言いたいのでした。

(いつもじゃ絶対言えない言葉だw)

0 件のコメント: