2008年9月7日日曜日

梅太@ 雑記:キャメロン・クロウ監督作について

この記事は 梅太 の名の下にお送りいたします

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 05年に『エリザベスタウン』を観て、DVDを持っているのですが、以来クロウ監督の作品は他に見て無かったです。
 そして先日、クロウ監督作品をすべて観終えたので、まとめて感想を。。

対象:
セイ・エニシング』(89)
シングルス』(92)
ザ・エージェント』(96)
あの頃ペニー・レインと』(00)◎
バニラ・スカイ』(01)
エリザベスタウン』(05)

※『リッジモンドハイ』は監督作品でないので省きます。
  (レンタル屋になかっただけですが・・)
◎:大のお気に入り。レンタル後DVD即買い。

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  ~~~ 青春独特の”間”の表現 ~~~


 クロウ監督作品の根幹は、”恋愛・青春”、でしょう。
 そして女性向けか男性向けかどちらかと言えば、男性向けな作品ですね。

 恋愛に”青春”が絡んでくると、連想されるのは青臭さや甘すっぱさ。
 思わずニヤっとしてしまう、男女間のやりとりではないでしょうか。

 クロウ監督は、”青春”が成せる、間とでも言いましょうか。
 そういうものを表現するのが非常にうまいです。

 会話をするシーンでも、この独特の間を有効に使って、一見普通の男女の会話なのですけど、「あぁ、この先何か進展があるのか。無いのか」というドキドキ感を醸し出しています。


 あと、出会いと別れ。
 特に別れについて。

 前述した、青春の”間”。
 きっと誰もが経験したであろうあの雰囲気によって、クロウ監督の作品は感情移入がしやすい。

 と、書いておきつつトム・クルーズ主演2作品(『ザ・エージェント』『バニラ・スカイ』)は、僕はどうにもトム様の演技が好きでないので入り込めなかったのですけどね.

 話を戻しまして。

 
 登場人物に移入してしまう分、別れのシーンと言うのがココロに響いてしまうんですよね。
 例えば『あの頃ペニー・レインと』のこのシーン。(リンク:you tube)


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 『あの頃ペニー・レインと』は、クロウ監督がジャーナリストとして働いていた青年期の実体験を元にした作品。

STORY:
 主人公ウィリアムが厳粛な家柄の中、姉がひそかに集めていたロックのレコードにはまってしまう。
 成長してジャーナリストとして駆け出し始めた時、取材先でバンド:スティルウォーターと、音楽を愛する少女:ペニーレインと出会う。
 密着取材のため、ペニーレインと共にスティルウォーターのライブツアーに同行することになるのだが・・・


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 リンク先の動画は、ウィリアムとペニーレインの別れのシーン。
 二人の間にはちょっとしたことでいざこざがあったのですが、和解し、イイ感じになります。
 しかしペニーレインは旅先から帰郷することになる・・・という場面。

 この淡く切ない別れの感じ。これだけ巧く表現できる監督がいるだろうか。

 ”移入”というのも一つのポイントですので、当然ながら、この作品を始めから観ていただいたほうがシーンの良さはわかるのですけどね。

 かく言う僕は、す・・・っごい、このシーン好きなんですよね。
 あとで触れますが、バックで流れるギタースコアもたまらないじゃないですか。


 この項目の締めと致しまして。

 青春を通過してきた人ならどこか移入できる部分があり、また思わず胸がキュンとしてしまう部分がある。

 きっと、クロウ自身は今でも青春時代に非常に重きを置いていて、それが鮮明に頭に残っているのだと思います。
 だからあの甘すっぱさや青臭さ、そして間を、ここまで緻密に画として切り出すことが出来るのではないでしょうか。



  ~~~ 音楽 ~~~

 クロウ監督作品に欠かせないのは、やはり音楽。
 きっと彼のコレクションであろう洋楽が、これでもか!と、ふんだんに盛り込まれています。

 しかし、ここで語れるほど、僕は洋楽(特にロック)には詳しくない・・・ということで別の観点から。

 劇中で使われる音楽には、その映画用に作られる曲と、既存の曲を使用するパターンがあります。
 また、既存の曲を使用する場合も、単なるBGMとして使うのと、曲のリズムを元に編集作業を行うのとでは違ってきます。

 クロウ監督は、既存の曲を元に、シーンのリズム付けを行うタイプでしょうね。
 このタイプでは他に、タランティーノ監督もそうです。

 簡単に言ってしまえば、ゆっくりな曲ではシーンの流れもゆっくり。
 テンポが速ければ、そういう風に編集するといった具合です。
 これが見事にマッチしていると、見ていてとても気持ちがいいです。

 また、クロウ監督作品に度々登場するスコアは、奥さんであるナンシー・ウィルソンが提供しています。
 特に印象的なのは、『あの頃~』以降のギタースコアでしょうね。
 先ほどのウィリアムとペニー・レインの別れのシーンでも、ギタースコアが流れています。

 これらのギタースコアを聴いてて思ったのですけど、青春の淡い雰囲気を表現するのに、アコースティックなギターの音色はとても良く合いますよね。
 というより、これ以上、合う音色なんてあるんだろうか?と思うくらいです。

 映画は、五感のうち視覚と聴覚を刺激するものです。
 (ポップコーンがあれば、嗅覚と味覚も刺激されると思いますけど・・・)
 映像のほかに音楽の使い方がうまいと、思い出に残りやすいものとなりますよね。


  ~~~ 登場人物の過去を髣髴とさせる手法 ~~~

 変な話かもしれませんが、劇中の登場人物にも過去と現在と未来があるはずです。
 僕らは彼らのたった一区間を観ているに過ぎません。(その人の一生を追った作品は別として)

 しかし、それはなかなか意識できるものではないはずです。
 劇中で登場人物の経緯を知るには、回想シーンくらいしかない。
 でもそれも、回想が物語りに絡んでくるものでなければ、貴重な2時間の上映時間には入れ込みはしないですよね。

 クロウ監督の作品では、回想シーンが出てくるものは無い。
 僕らは本当に、登場人物の人生の、ある一区間しか見ていないのです。
 でも不思議と彼らの過去の人物像が見えてくるのですよね。

 注意して思い返してみると、クロウ監督は写真を多用しているように感じました。

 写真は、過去のある一点の記録です。
 例えばそこに、笑っている親子が写っていれば、「あぁきっと円満な家庭だったんだな」と汲み取ることが出来ます。
 先祖代々の写真が飾ってあれば「歴史の古いお家柄だったんだな」と汲み取ることが出来ます。

 台詞やナレーションでいちいち説明しなくても、たった一枚を見せることで登場人物の過去を、そして人物像を垣間見れる。
 写真を効果的に画面に映しこむことによって、作品に奥行きが増しているように思います。

 (特に『バニラ・スカイ』や『エリザベスタウン』ではこの手法を多用してます)



  ~~~ まとめ ~~~

 クロウ監督の作品は、何度も言うようですが青春時代の淡い恋を表現するのが巧く、
 20代それ以降の特に男性の方は、何かしら移入できるものがあると思います。

 洋楽の知識があったほうがもっと楽しめると思うのですが、無くてもOKです。
 僕も、無いですし。

 実際に観てみて、作品の好き嫌いはあるかと思いますが、上で書いたような点に着目してみると、評価できる点がきっとあるはずです。


 気になった方は、是非観てみてください。

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 作品の個別の感想を書くというよりは、監督の作品の作り方という面を自分なりに考察してみた今日の記事。
 いかがでしたでしょうか。

 書いた本人の感想としましては、いやもう、”淡い青春の雰囲気”なんて、文章でどう巧く表現してよいのやら・・・



 一人の監督の作品をすべて観てみると、毛色の違う作品でもどこか共通点があったり、監督独特の手法があったりします。
 「あ、この作品好きかも」と思う作品に出会ったら、パッケージ裏で監督名を確認し、その監督のほかの作品を観てみる。
 そして自分なりに考察を加えてみると、映画に対してまた違った楽しみが生まれると思いますよ。

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