いよいよ寒いですね。
■第22回東京国際映画祭 特別招待作品『カールじいさんの空飛ぶ家』@TOHOシネマズ 六本木(10/25鑑賞)
『モンスターズ・インク』のピート・ドクターと『ファインディング・ニモ』の脚本家ボブ・ピーターソンが共同で監督を務める3Dアニメ。
冒険家への夢をあきらめ切れずにいる78歳の老人に、驚きの出来事が巻き起こる冒険ロード・ムービー。
ピクサー最新作は初の3D映画。
12月の一般公開を前に、今年もTIFFで観れるのを楽しみにしてました!
どうしたピクサー! これがあなた達の実力じゃないはず!
「面白い・つまらない」の2択で言えば、「面白い」の評価に入るのですが、ハッキリ言って微妙でした。
前作『ウォーリー』があまりに完璧な作品だったので、今回はそれを超えるのは至難だとは思っておりましたが、あまりの力の無さにガッカリ・・・
ストーリーはと言うと、少年時代に出会ったカールとエリーは、ともに冒険好きで意気投合し結婚、子どもには恵まれなかったものの幸せな夫婦生活を送ってきたが、エリーは病に倒れ亡くなってしまい、78歳のカールはひとりぼっちになってしまう。
しかし彼には幼い頃に2人で誓った「冒険の夢」があった。
愛する妻を亡くし、家まで奪われそうになった彼は遂に決意し、2人の思い出が詰まった家に無数の風船をつけ、空高く飛び上がっていった・・・
序盤はとにかく素晴らしかったです。
幼い頃の2人の出会いから結婚、幸せな日々を描き、妻が亡くなるまでをダイジェストで見せていく映像は、セリフを一切いれずに多くの感情を語っており、これはまさにピクサーのなせる演出でした。
途方に暮れたカールじいさんが決心をし、唯一の財産である家に風船を結びつけ、空へと飛び立っていく様子は、ストーリー的にも映像的にも暗かった場面から、一気に夢が広がっていき、あまりの素晴らしさに思わず泣いてしまいました。
しかし中盤、冒険の旅の佳境に入った辺りから、新しいキャラクターがいっぱい登場するのですが、どうもそれが世界観に合っていませんでした。
で、登場するキャラが増えたことで、達成しなければいけない目的も増えてしまい、結果として本来の目的であったはずの場所に辿り着くという大きな軸がブレてしまい、物語の印象がかなり散漫で薄い内容に感じられてしまいました。
過去の作品で例に挙げるならば、『ウォーリー』が「手を繋ぐこと」、『ニモ』が「親子の再会」だったように、キャラクタやサイドストーリーが増えてしまっても、具体的でシンプルな目的があれば、話の面白さは絶対に揺らぎません。
今回は「冒険」という漠然としたタイトルに囚われてしまったおかげで、「目的の地」というような具体的なポイントがあるにも関わらず、そこに辿り着いても話が終わらない気持ち悪さを感じてしまいました。
またキャラクタでいうと、主人公を人間にしてしまったのが、やはり大きかったように思います。
ピクサーといえば、『トイ・ストーリー』や『バグズ・ライフ』、『モンスターズ・インク』などのように「人間の世界と別の世界の繋がり」を描いた作品が中心です。
『カーズ』に至っては、人間すら登場させず、キャラクタだけで作られた世界を描いていました。
しかしどの作品も、「可愛らしいキャラクタ」というだけでは終わらず、キッチリとした世界観の中で繰り広げられるドラマがありました。
ピクサーに限らず、普通のアニメや絵本などでもそうですが、「人間以外に語らせる」というのは、ドラマとしてかなり有力な手法です。
人間が言ってしまえば、クサ過ぎたり、説教じみた言葉になってしまいがちなセリフでも、個性が外見に表れているようなキャラクタが言うことで、よりストレートに抵抗なく伝わってきます。
ところが人間が吐くセリフというのは、人間でしかないワケですよ。
今作でも心に響くようなセリフがいっぱいあったのですが、いくら素敵でためになる事を言っても、どこかに生活観のある人間が言ってしまうと、一気に冷めてしまいました。
ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、中心となる登場人物が人間に偏ってしまい、後半で登場する人間以外のキャラクタの個性も活かされていないコトが、かなり致命的であったと思います。
ただ評価すべきポイントというのはもちろんありました。
やはり映像力としては大変素晴らしかったです。
今までCG映像のパイオニアだったピクサーが、3Dメガネをかけて飛び出す映像に進化したのは、当然のことだと思いますが、スクリーンにより広がりが感じられる素晴らしい映像だったと思います。
ストーリーだけを見れば、決して悪くない、むしろ感動できる良い話なのは確かなんですが、果たしてこれをピクサーがやるべき内容なのかと考えると、全くピクサーらしくない・・・
ピクサーがやるべきストーリーでは無かったと思います。
例え同じ設定で人間を主人公にするにしても、具体的な目標をしぼり、登場人物の数も抑え、そこに専念するシンプルなストーリーであれば、もっと違った作品になったのではないかと思います。
ピクサーが大好きな人間なので「失敗作」とは言いたくないですが、2度3度劇場に通い、その度に「最高だ!」とは言えない作品です。
非常に残念です・・・
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