2011年3月15日火曜日

梅太@ コラボでシネマ:ブルースと言う名前の贈り物

この記事は 梅太 の名の下にお送りいたします

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 なんだろう、何となくこんな時って、ヴォネガットが読みたくなるのですよね。

 『国のない男』- カート・ヴォネガット

 二次大戦を経験し、ヴォネガットは人間の愚かさを知る。
 それは彼の数々の物語の中で色濃く描かれるが、同時に彼は、人間が見出した色々の芸術を愛した。
 そして芸術を通じて、色々あるけどそれでもやっぱり、人間への愛情を捨てきれない人だった、と僕は思っている。

 ヴォネガットがこの本の中で語る二次大戦、それは人が相手のものである。
 一方、今回の東北大地震、それは自然が相手である。
 しかし相手は違えど、人に与えた、特に精神的なダメージというものは、どこか共通する部分があるように感じた。

 この本で描かれた一つ一つの台詞、ユーモア。
 それは大地震でダメージを受けた人、そして実被害から免れても、連日のニュースで精神的に参ってしまっている人、そんな人へ、ちょっとした薬になるのでは無いかと、思ったのです。

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 ・・・といって、全ての言葉を書き出すことは、いわゆる著作権法なり何なりに引っかかり、この状況下で警察の方々のお手間を増やすわけにはいかない。
 なので中でも、音楽とユーモアについて、幾つかを抜粋することにする。

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ブルースは絶望を家の外に追い出すことは出来ないが、演奏すれば、その部屋の隅に追いやることは出来る。

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 背景はこうだ。
 アメリカの奴隷時代、つまり黒人に対する差別が酷かった時代。
 白人の奴隷所有者達の自殺率は、奴隷であった黒人のそれよりも高かったらしい。

 その理由は、奴隷たちが絶望の対処法を知っていたからということみたいだ。

 今置かれてる現状が、そしてこの後に残る傷跡が、キレイさっぱり消えるわけでは無いけれど、それを外へ外へと追いやろうとする。
 そんな術を具現化したもの、それこそがブルースという音楽・・・らしい。

 負の状況下で、ポジティブに生きようとする力。
 確かにブルースを聴いていると、底から持ち上げてくれるような感覚がある。

 この言葉を読んだとき、色々と繋がったものがある。
 なぜヴォネガットは、数多くある音楽のジャンルの中で、このブルースを取り上げたのか。

 それは”ユーモア”に対する、ヴォネガットの考え方;ユーモアというのは、いってみれば恐怖に対する生理的な反応なんだと思う - に寄るのだと思う。
 そういう逆境的な局面で、生まれるものがあるという事だ。
 (おっと、セミコロンを使ってしまった)

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 さて、普段あまり真面目に見られない僕ですが、ユーモアってなんだろうというのは、意外に真面目に考えていて、いやそもそもユーモアを眉間に皺寄せて根つめて考えたら、それって自分は面白く無いだろう、その状況、むしろ笑える・・・という、これもまた一つの小噺なのだけど、そこは置いておいて。

 ・・・話が逸れたけど。

 こういう状況下で、笑いの力って凄く威力を発揮すると思うのだけど、いざ災害とご対面してみると、それって難しいと、心から思いました。
 この状況で、お前何を言ってんだ?と言われる可能性だってあるし、ヴォネガットも「どうやってもジョークにならない素材というものがある」と言っている。
 (彼の場合、大災害はジョークに出来る分類に入るみたいだけど)

 今回改めてこの本を読んだとき、確かに、僕が求めるユーモアってここにある・・・と思った。
 少し皮肉っぽいけど、決して攻撃的でなくやわらかい、聞くと安心するユーモア。
 でも自分でやるとなると、境目というものが、わからない。
 この線は超えていいのかいけないのか、わからない。

 いやはや笑えるジョークは、むつかしい。
 そしてジョークって、すごく勇気がいるものなのだと、思いました。

 でも、週が明けて、人に会って、笑っていると、かなり救われますよね。
 笑いっていうのはいいものです。

 怯むなんて、僕らしくない。
 だから自分としても、ここでめげないで、ユーモアについてもっと勉強したいと思いました。
 いや、勿論その前に、被災者の方に、実のある支援をするのが先決ですけどね。

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 さて、なにも本の紹介をしようと思って、このブログを立ち上げたわけでなく。
 いやそれでも、ほんのちょっと位は、本の紹介をしたっていいじゃないかよ、とも思いつつ。

 このブログは何のため?と言われれば、そうだ映画の紹介の為だと思い。
 こんな時、ブルースのように、皆を元気にしてくれる映画ってなんだろう。

 お察しの方もいるかと思いますが、ここでは『ブルース・ブラザース』を紹介させて頂きます。
 いやはや、実に安直。

 主人公兄弟が織り成すドタバタ劇は、否応なしに見るものを笑わせてくれますし、劇中歌われるブルースの数々は、吊られて自然と体が動いてしまいます。

 一曲だけ、紹介。
 その名も『監獄ロック』。
 上に書いたブルースの歴史を聞くと、題名が皮肉っててね、いいでしょ?

『Jailhouse Rock』



↓↓↓劇中シーンはコチラで観れます↓↓↓
http://www.youtube.com/watch?v=g22b9mjzQKg


 ジョークと、音楽に満ちた、こんな時、抜群にオススメしたい作品。
 余裕のある方は是非どうぞ。

 そういえば、先日Bar NOIに行った時、外人さんとこの作品の話になりましてね。
 そしてヴォネガットの本、ブルースの話。
 何だか色々と、繋がってる気がする。


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 最後に。 またヴォネガットの言葉で。

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唯一わたしがやりたかったのは、人々に笑いという救いを与えることだ。
ユーモアは人の心を楽にする力がある。アスピリンのようなものだ。
百年後、人類がまだ笑っていたら、わたしはきっと嬉しいと思う。
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 僕は4年ほど前にこの言葉を読み、以後、物事の考え方の軸になっている。


●この記事で紹介したもの

・本:『国のない男』 - カート・ヴォネガット
・映画:『ブルース・ブラザーズ』



被災者の方、そうで無い方も、みんながんばろう。

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