2009年1月12日月曜日

梅太@ 劇場:『僕らのミライへ逆回転』

この記事は 梅太 の名の下にお送りいたします

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「これが素敵でなくて、ほかに何がある?」
  -『タイムクエイク』 カート・ヴォネガット

●”映画”にオマージュを捧げた大傑作『僕らのミライへ逆回転
 監督はミシェル・ゴンドリー
 主演はJBことジャック・ブラックと、モス・デフ

 昨年公開でしたが、タイミングが合わず・・・
 このたびやっと佐賀へ上陸したので、観て来ました。
 
 まず、一言。
 この作品を観なかったら、今年一年ずっと悔しい思いをしたはずです。


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 ~~~ 往年の名作の裏側 ~~~

 未だにVHSしか置いていないレンタル屋。
 ある事件をきっかけに磁気を帯びてしまったジェリー(JB)が、VHSに近づいたせいで、テープの中身が消えてしまった。
 カモフラージュのため、親友マイク(モス・デフ)とともに、作品をリメイクし始める。

 そのリメイクの元になっている作品は、往年の名作ばかり。
 もちろん予算も何も無く、二人が全てお手製で作り上げるわけで、衣装もセットもお粗末なもの。
 しかし、彼らは創意・工夫とそして何より熱意で、”本物っぽい”作品を作り上げてしまう。

 お粗末なセットは裏側が見え見え。
 しかし、CGのない時代の作品たちは、「あ、こういう風に作られてたんだ」という発見がある。
 また、「こういう風にすれば、CGが無くても作れるんだ」という発見もある。
 僕にとっては笑えるというより「見事!」と、思わず拍手してしまった。

 『2001年宇宙の旅』の無重力靴。
 『キング・コング』の遠近法。
 『ゴーストバスターズ』のゴーストの消失・出現は、簡単なトリックではある。しかしこの手法は、昨年の『ジャンパー』でも用いられているのです。
 『ラッシュアワー2』のリメイクで見せた、回転プレートを使った「ヒッチコック落ち」は、大爆笑だった。


 しかし、これらのリメイクは、著作権侵害として政府に訴えられてしまう。(それで商売してしまったからね)
 「じゃあ俺たちの映画を作ろうぜ!」となったとき、古いフィルムの質感を出すため、カメラの前にファンと糸を置いて撮影。
 どこまでもどこまでも、「なるほど!」と思わせてくれる。

 終始楽しかった。

 ~~~ ラストシーン:映画って、こういうものだ ~~~

 「俺たちの映画を作ろうぜ!」というところから、作品は終盤を迎える。
 この”俺たち”というのは、舞台となる町の人たち。しかもみんな、である。
 正直なところ、僕はこの辺りから泣きそうだった。

 だって、楽しそうに作るのだもの。
 あのみんなの笑顔、たまらない。

 みんなで意見をだし、みんなで議論し、みんなで作り上げる。
 「映画の完成」へ向けて、全員のベクトルが同じほうを向いている。
 それはもちろん、”自分たちにとって最高の作品を作り上げる”ためである。

 映画が完成し、狭い部屋で、上映会を行う。
 テレビが壊れてしまったけれど、近くの大手レンタルショップの店員が、投影機を貸してくれた。
 大窓に白幕(スクリーン)を張りつけ、いよいよ上映。

 この時、カメラはスクリーンを写さない。
 何を見せるかというと・・・

 スクリーン光が反射した、人々の顔。
 楽しげで、幸せそうな人々の顔。
 自分たちが楽しんで作り上げた”最高の作品”を、満面の笑顔で楽しむ。

 このシーンを見たとき、僕は涙すると共に、思ったことがある。
 「映画って、こういうものなんだろうな」

 ”自分たちにとって最高の作品を作り上げる”。
 映像が、衣装が、セットが、出来が良い、とかは問題ではない。
 本当に楽しんで作った映画は、スクリーンからその楽しさや真剣さが観客に伝わってくる。

 これは、エド・ウッド監督の作品に通じるところがある。
 僕は『Plan 9 from outer space』しか見たことないのだけれど、演出(セットなど含む)の適当具合は、歴代トップクラスと言える。
 でもなぜかはわからないけれど、見続けてしまう。
 それは、エド・ウッド監督の情熱のなせる業であると、今ならわかる。

 また、グラインドハウス系の作品をはじめとする低予算作品が、なぜあんなに楽しいのかも、わかった気がする。
 商業性とかそういうものではなく、まず「製作者の楽しげで真剣な雰囲気」がダイレクトに伝わり、また共有できるからだと思う。

 作って、そして楽しむ。楽しんでもらう。楽しんでもらおうと努力する。
 これが映画であり、映画以外の創作物にも、共通のことであると思う。

 
 話を戻して。

 上映中、レンタル屋の店長がふと気づく。なにやら外が騒がしい。
 外にでてみると・・・

 大窓に映し出された作品を、街路で見ている人たちが笑っているのである。
 監督の二人(ジェリーとマイク)が外に出ると、みんなからの暖かい拍手が迎える。

 僕の涙を搾り取る気ですか?

 もう、この作品大好きだよ。


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 映画へのオマージュを捧げているという点では、『ニューシネマパラダイス』に劣らない作品だと思う。
 僕の中で。

 さて、2ヵ月後にはもうDVDが発売します。
 もちろん買います。
 きっと、何かの節目にたびたび見る作品になると思います。

 あえてVHSで販売なんていう、オツなことをやってくれないだろうか。
 需要は無いと思いますが、僕はそれ絶対買う。

 09年一本目となった本作ですが、いきなりの大傑作。
 えと、これを超える作品、今年あるのかなぁ・・・

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