この記事は 梅太 の名の下にお送りいたします
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●あの夏に置いてきた、小さな”わすれもの”:『借りぐらしのアリエッティ』
監督:米村宏昌
出演:志田未来、神木隆之介
青春、という言葉から思い出される季節は、圧倒的に夏が多い様な気がする。
それはなぜだろうか。
着ている服が薄くなるように、心もどこか、開放的になるからだろうか。
何にせよ、「夏」というのは、その言葉だけでドキドキしてしまう。
「夏の出逢い」というものに、憧れてしまう。
そしてできることなら、この作品の様な出逢いがあったなら、いいな、と思う。
いやもしくは自分が忘れているだけで、もしかしたら子供時代は、こんな出逢いをしていたのかも・・・
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ストーリーは。
心臓の手術を控えた少年:翔は、母が出張中に、親戚の家で一週間を過ごす。
親戚の家を訪れた初日、翔は庭で、小さな小さな女の子を見かける。
彼女の名はアリエッティ。”借りぐらし”をする、小人族の一人であった。
翔は、小人の世界を知る。
アリエッティは、人間の世界を知る。
二人の出逢いは、互いの”世界”の見方を変えていく。
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『借りぐらし』のアリエッティは、小人のお話である。
人間の住む家のちょっとした隙間から入り込み、必要最低限のものを”借り”て、生活している。
彼らの住まいは、僕達の家の下。
普段は気にもしない、暗闇の中。
さて。
ファンタジーとは、非現実的な物事を描く。
しかしそれを紡ぐ作者は、現実に生きる人たちである。
だから、彼らが紡いでいる物語には、現実世界の中に着想があるはずで・・・
最近、そういう事を考える。
素晴らしいファンタジーを観るとなお一層考えてしまう。
「この人たちはいったいどこからヒントを得ているのだろう・・・」
そう考える時間、思いを馳せる一時が楽しい。
この作品の着想の一つとして、僕が考えるのはこれだ。
家の中で、モノをなくす。
探しても探しても見つからない。
しかし、しばらく時間がたったころ、それはあっさりと見つかってしまう。
「なんでこんな目立つところにあったのに、見つからなかったのだろう」
作者は考えたのだと思う。
「きっと誰かがそれを、一時的に”借り”ていたのではないだろうか。」
誰が?
それは例えば、小さな小さな人間が。
でもそこは自分の狭い部屋。
いくら小人だからって、いつもいる場所だし、一目くらいは見ていてもおかしくない。
彼らは一体、何処に住んでいるのだろう。
「そうか、きっと彼らは、家具や床下の狭い狭い隙間に住んでいるんだ、そうに違いない。」
そうやって人間は、不可思議な出来事に遭遇すると、想像で埋めようとする。
特に、”ハッキリ”としないものは、想像の宝庫である。
”ハッキリ”と見渡せない暗闇の中に、何かいるのではないか。
”ハッキリ”と分からない事象には、何が絡んでいるのだろうか。
そうやって想像することで、人生を楽しくしている。
そしてその想像を言葉で表すと、本になる。
作者が想像した創造物が、人の手に渡り、また新たな想像を生み。
そしてまた、何かが創造される。
人が想像することをやめない限り、魅力的なファンタジーは、止まることなく生み出される。
それは僕にとって、とても嬉しい連鎖であると思う。
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以上のようなことを考えながら、翔とアリエッティの出逢いを見つめる。
翔にとって当たり前だと思っていた世界の中に、突如としてイレギュラーが入り込む。
自分の知らない世界があったことを知る。
現実と、ファンタジーが出会う瞬間だ。
涙しか出てこなかった。
想像力の勝利である。
二人の出逢い以降、僕の想像力は様々な方向へ飛翔していく。
ただ、風が吹くだけで。
ただ、草木が揺れるだけで。
ただ、窓に小石がぶつかるだけで。
ただ、床が軋むだけで。
そして。
ただ、そこに自然と言うものがあるだけで。
そこには”何か”が潜んでいるのではないか、と思ってしまう。
そうやって”想像する”だけで楽しくなってしまう。
それは「夏」という言葉を聞くだけで、”何故か”それだけでドキドキしてしまう感覚に良く似ている。
この夏、これから起こるであろう出来事を”想像”するだけでワクワクしてしまう。
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物語は大きなスペクタクルがあるわけでもなく。
ポニョのような、ド派手な水走りがあるわけでもない。
ラピュタのようなバルスもない。
ただ夏が来て。
ただ二人が出会った。
それだけの話だ。
しかし、自然の中でゆっくりと過ぎていく中で、小さな楽しみを見つけ出す。
その小さな楽しみを、想像力によって、大きな楽しみへと昇華させる。
そんな夏を、久しく過ごしていなかった様な気がする。
小さな紙切れに、翔が書いた「わすれもの」の一言。
僕はあの頃の夏に、ただ想像するだけの楽しさを、忘れてしまったかもしれない。
それは今からでも、とりにいけるだろうか。
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この夏は、ワクワクする日々を過ごしたい。
そんなあなたにオススメの一本。
いや、必見の一本。
是非是非、劇場で。
大好きな作品です。
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